脳卒中後に
- 「手の感覚が鈍い」
- 「触っているのに分かりにくい」
- 「しびれがずっと続いている」
- 「熱い・冷たいが分かりづらい」
このような症状で悩んでいる方は少なくありません。
「手が動かないこと」ばかりに目が向きがちですが、実は感覚の障害は手の機能回復に大きく影響します。
今回は、作業療法士の視点から、手の感覚が鈍くなる原因やリハビリ方法について詳しく解説します。
手の感覚が鈍くなる原因とは?
私たちは物を持つ時、
- ・どのくらい力を入れるか
- ・どんな形なのか
- ・滑っていないか
- ・温度はどうか
などを感覚情報によって判断しています。
感覚は
手
↓
神経
↓
脊髄
↓
脳
というルートで伝わります。
脳卒中では、この情報を処理する脳の一部が損傷するため、感覚が正常に伝わらなくなります。
その結果、
- ・感覚が鈍い
- ・しびれる
- ・ピリピリする
- ・触っている感じが薄い
- ・自分の手の位置が分からない
といった症状が現れます。
感覚にはいくつか種類があります
①表在感覚
皮膚で感じる感覚です。
- ・触覚
- ・温度覚
- ・痛覚
これらは日常生活でもっとも使われます。
例えば
- ・ポケットの中の鍵を探す
- ・コップを持つ
- ・熱い鍋に触れる
などです。
②深部感覚
筋肉や関節から伝わる感覚です。
代表的なのが
位置覚(関節位置覚)
目です見えなくても
「手がどこにあるか」
が分かる感覚です。
これが低下すると
- ・コップを取ろうとしてズレる
- ・手を思った位置に動かせない
- ・ボタンが留められない
などが起こります。
③複合感覚
複数の感覚を脳で統合して判断する能力です。
例えば
目を閉じて
- ・硬貨
- ・鍵
- ・ボールペン
を触っただけで分かる能力です。
これを立体覚といいます。
なぜ感覚障害があると手が動きにくくなるの?
身体は
「感覚」と「運動」がセット
で働いています。
手の場合だと、
例えばコップを持つ時
①手を伸ばす
②触れた感覚を確認
③力を調整する
④滑らないように握る
という流れになります。
感覚が低下すると
- ・力を入れ過ぎる
- ・力が弱すぎる
- ・物を落とす
- ・動きがぎこちない
といったことが起こります。
つまり
感覚が悪いままでは運動も改善しにくい
のです。
感覚障害でよくある困りごと
日常生活では
コップを落とす
握っている感覚が分かりづらいため、気づかないうちに力が抜けます。
ボタンやファスナーが難しい
指先の感覚が鈍いため、細かな操作が難しくなります。
財布の小銭が取りにくい
指先で硬貨を識別できません。
手袋を着けるのが苦手
指がどこに入っているか分かりづらくなります。
ケガに気付きにくい
熱さや痛みを感じにくく、
火傷や切り傷が悪化することもあります。
感覚は改善するの?
結論から言うと、
改善する可能性はあります。
脳には
神経可塑性(しんけいかそせい)
という性質があります。
適切な刺激を繰り返すことで、
脳は新しい神経ネットワークを作ろうとします。
つまり
感覚も学習できるのです。
ただし
- ・発症から時間が経っている
- ・長期間使っていない
- ・適切な刺激が少ない
場合は改善まで時間がかかることがあります。
リハビリで行う感覚訓練
①さまざまな素材に触れる
例えば
- ・タオル
- ・スポンジ
- ・綿
- ・木
- ・金属
- ・ゴム
など、
異なる質感を触り比べます。
「柔らかい」
「硬い」
「冷たい」
など言葉にしながら行うことも大切です。
②目を閉じて触る練習
視覚に頼らず
触った感覚だけで
何を持っているかを当てます。
脳が感覚情報を処理する練習になります。
③鏡を使った練習(ミラーセラピー)
鏡に映した健康な手を見ながら動かすことで、
脳に「麻痺した手が動いている」という情報を与えます。
感覚や運動機能の改善に役立つ場合があります。
④麻痺した手を生活で使う
感覚は
使うほど育ちます。
例えば
- ・テーブルを拭く
- ・タオルを持つ
- ・コップを支える
- ・洗濯物を押さえる
など、
日常生活の中で役割を持たせることが重要です。
⑤手を見ることも大切
感覚が分かりづらい人は
まず視覚で確認します。
見ることで脳への入力が増え、
感覚の再学習につながります。
自宅でできる自主トレーニング
安全に行える方法として、
- ・タオルを握る・離す
- ・様々な素材に触れる
- ・ビーズやスポンジをつまむ
- ・コインを並べる
- ・粘土をこねる
- ・洗顔や保湿時に手を意識して触る
- ・麻痺した手で軽い物を支える
などがおすすめです。
大切なのは「正確に感じよう」と意識しながら行うことです。
回数をこなすだけではなく、「今どんな感覚があるか」を脳に認識させることが、感覚の再学習につながります。
感覚訓練で大切なポイント
感覚障害は目に見えないため、「もう治らない」とあきらめてしまう方もいます。しかし、適切な評価に基づいて段階的に刺激を与え、生活の中で麻痺した手を活用していくことで、変化が見られるケースも少なくありません。
また、感覚障害の種類や程度は一人ひとり異なります。そのため、「他の人と同じ訓練」を行うのではなく、ご自身の状態に合わせたリハビリを進めることが重要です。作業療法士などの専門職による評価を受けながら取り組むことで、より効率的な改善が期待できます。
まとめ
脳卒中後の手のしびれや感覚の鈍さは、日常生活に大きな影響を与える症状です。しかし、感覚は「失われたまま」ではなく、適切な刺激を繰り返すことで脳が再び学習し、改善が期待できる場合があります。
感覚の回復には時間がかかることもありますが、焦らず継続することが大切です。動きだけでなく感覚にも目を向けることで、「物を持ちやすくなった」「ボタンが留めやすくなった」など、生活のしやすさにつながる変化が生まれることがあります。
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