「脳卒中の後から肩が痛い」
「手足がジンジンする」
「動かしていないのに痛む」
「リハビリを頑張りたいのに痛みで動けない」
脳卒中後、こうした“痛み”に悩まされる方は少なくありません。
しかし実際には、麻痺や歩行障害に比べて「痛み」は周囲に理解されにくく、「年齢のせい」「仕方ない」と言われてしまうこともあります。
ですが、脳卒中後の痛みには明確な原因があり、適切なリハビリや身体管理によって改善を目指せるケースも多くあります。
今回は、脳卒中後遺症と痛みの関係について、医学的な視点も交えながら、わかりやすく解説します。
脳卒中後に起こる「痛み」とは?
脳卒中後の痛みには、いくつかの種類があります。
代表的なものは以下の通りです。
- ・肩の痛み(肩手症候群)
- ・筋肉や関節の痛み
- ・痙縮(筋肉のつっぱり)による痛み
- ・神経障害性疼痛
- ・中枢性脳卒中後疼痛(CPSP)
- ・廃用による慢性痛
つまり、「脳卒中後の痛み」といっても、原因はひとつではありません。
痛みの原因を見極めることが、改善への第一歩になります。

なぜ脳卒中後に痛みが起こるのか?
① 麻痺による姿勢の崩れ
脳卒中では、筋力低下や麻痺によって身体のバランスが崩れます。
特に多いのが、肩関節への負担です。
本来、肩は筋肉が支えることで安定しています。
しかし麻痺によって支える力が低下すると、肩関節が不安定になり、炎症や痛みを起こしやすくなります。
これは「肩関節亜脱臼」と呼ばれる状態につながることもあります。
また、
- ・猫背姿勢
- ・麻痺側足への体重移動が不足
- ・同じ姿勢が続く
- ・身体を動かさない
こうした要素が積み重なることで、筋肉や関節に過剰な負担がかかります。
② 痙縮(けいしゅく)
脳卒中後によく見られる症状に「痙縮」があります。
痙縮とは、筋肉が過剰に緊張し、勝手につっぱってしまう状態です。
例えば、
- ・手が強く握り込む
- ・肘が曲がったままになる
- ・足が突っ張って歩きにくい
などがあります。
この筋緊張の異常が続くことで、
- ・筋肉疲労
- ・関節へのストレス
- ・血流低下
- ・拘縮
が起こり、慢性的な痛みにつながります。
③ 神経そのものが痛みを感じる状態になる
脳卒中後の痛みの中でも、特に辛いのが「神経障害性疼痛」です。
これは、筋肉や関節ではなく、“神経回路そのもの”が異常な痛み信号を出している状態です。
特徴として、
- ・触れただけで痛い
- ・焼けるような痛み
- ・電気が走るような感覚
- ・ジンジン・ピリピリする
などがあります。
特に視床という脳の部位が損傷すると、「中枢性脳卒中後疼痛(Central Post-Stroke Pain)」が起こることがあります。
これは脳卒中患者の約7〜10%に発症すると報告されています。
文献報告:脳卒中後疼痛は珍しくない
実は、脳卒中後の痛みは非常に頻度が高いことが分かっています。
あるシステマティックレビューでは、脳卒中経験者の約30〜50%が慢性的な痛みを抱えていると報告されています。
特に多いのは、
- ・肩の痛み
- ・痙縮関連疼痛
- ・中枢性疼痛
です。
また、痛みがある患者さんでは、
- ・活動量低下
- ・リハビリ参加率低下
- ・抑うつ
- ・生活の質の低下
との関連も強いことが示されています。
つまり、「痛み」は単なる不快症状ではなく、回復そのものを妨げる大きな要因なのです。

「動かさない」がさらに痛みを悪化させる
痛みがあると、多くの方は身体を動かさなくなります。
しかし実は、これが悪循環を生みます。
動かさないことで、
- ・関節が硬くなる
- ・血流が低下する
- ・筋力が落ちる
- ・姿勢が崩れる
- ・さらに痛みが出る
というサイクルに入ってしまいます。
特に脳卒中後は「麻痺+不活動」が重なるため、廃用症候群が起こりやすくなります。
そのため、“痛みがあるから完全安静”ではなく、「適切に動かすこと」が重要になります。
リハビリで痛みは改善できるのか?
結論から言えば、改善できる可能性はあります。
ただし、「とにかく筋トレ」では逆効果になる場合もあります。
重要なのは、
- ・なぜ痛いのか
- ・どこに負担がかかっているのか
- ・神経由来なのか
- ・関節由来なのか
- ・姿勢や動作はどうか
を評価することです。
痛みに対するリハビリのポイント
① 姿勢・身体の使い方を整える
脳卒中後は、無意識に“痛みが出やすい姿勢”になっていることがあります。
例えば、
- ・麻痺側に体重を乗せられない
- ・肩がすくむ
- ・体幹が傾く
- ・骨盤が後ろに倒れる
などです。
これを整えるだけでも、痛みが軽減することがあります。
② 関節を適切に動かす
肩関節は特に繊細です。
無理に動かすと炎症を悪化させることがあります。
そのため、
- ・肩甲骨の動き
- ・体幹との連動
- ・支持性
- ・筋活動
を考えながら、安全に動かす必要があります。
③ 感覚入力を増やす
脳卒中後は、感覚障害によって身体認識が低下していることがあります。
すると脳が身体をうまく認識できず、異常な緊張や痛みにつながることがあります。
そのため、
- ・触覚刺激
- ・荷重練習
- ・ミラー療法
- ・感覚再教育
などが有効な場合があります。
④ 痙縮管理
痙縮が強い場合は、
- ・ストレッチ
- ・ポジショニング
- ・装具
- ・ボツリヌス療法
- ・電気刺激
などを組み合わせることがあります。
特に「頑張って伸ばす」だけでは改善しないケースも多く、神経学的視点が重要です。
痛みを我慢し続けないでください
脳卒中後の痛みは、
「年齢のせい」
「麻痺だから仕方ない」
「動かないから痛いだけ」
と片付けられてしまうことがあります。
しかし実際には、
- ・神経
- ・姿勢
- ・筋緊張
- ・感覚障害
- ・動作パターン
など、さまざまな要素が複雑に関係しています。
そして適切な評価と介入によって、改善の可能性は十分あります。
まとめ
脳卒中後の痛みは、非常に多くの方が抱える問題です。
特に、
- ・肩の痛み
- ・痙縮による痛み
- ・神経障害性疼痛
は日常生活やリハビリに大きな影響を与えます。
しかし、「痛み=もう回復しない」ではありません。
身体の使い方や神経の状態を丁寧に評価し、適切なリハビリを行うことで、痛みの軽減や生活の質向上につながる可能性があります。
「痛みがあるから動けない」ではなく、
“どうすれば安全に動けるか”を一緒に考えることが大切です。
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