脳卒中後、
- 「足が突っ張って歩きにくい」
- 「力を抜こうとしても抜けない」
- 「歩くと足がピーンと伸びる」
- 「足先が内側に入る」
- 「歩くとつま先が引っかかる」
このような症状で悩まれていませんか?
脳卒中後によく見られるこの症状は、「痙縮(けいしゅく)」と呼ばれます。
痙縮は、単なる“筋肉の硬さ”ではありません。
脳や神経の障害によって起こる、運動コントロールの異常です。
症状が強くなると、
- 歩きにくい
- 転びやすい
- 疲れやすい
- 痛みが出る
- 関節が変形する
など、生活に大きな影響を及ぼすことがあります。
今回は、
- 痙縮とは何か
- なぜ起こるのか
- どんな特徴があるのか
- リハビリで何ができるのか
について、研究や文献も交えながらわかりやすく解説します。
痙縮とは?
痙縮とは、
「筋肉が過剰に緊張し、伸ばした時に強く抵抗が出る状態」
のことです。
特に脳卒中後では、
- 足が突っ張る
- 手が握り込む
- 力を抜けない
などとして現れることがあります。
これは脳卒中によって、脳から筋肉への“抑制”がうまく働かなくなるために起こります。
つまり、
「筋肉が悪い」
のではなく、
“脳からの運動コントロール異常”
が原因なのです。
なぜ痙縮が起こるのか?
私たちの身体は通常、
- ・力を入れる
- ・力を抜く
を脳がバランスよく調整しています。
しかし脳卒中では、脳の運動系ネットワークが損傷します。
すると、
「筋肉を抑えるブレーキ機能」
が弱くなってしまいます。
その結果、
- ・少し動かしただけで力が入る
- ・伸ばすと反射的に突っ張る
- ・無意識に筋肉が緊張する
状態になります。
これが痙縮です。
「硬い」と「痙縮」は違う
よく、
「筋肉が硬いですね」
と言われることがあります。
しかし実際には、
筋肉の硬さ(拘縮)
と
痙縮
は別のものです。
拘縮とは?
拘縮は、
- ・関節が動かない
- ・筋肉や組織が短くなる
- ・長期間動かさない
ことで起こります。
つまり“組織そのものの硬さ”です。
痙縮とは?
一方、痙縮は、
“神経の興奮異常”
によって起こります。
そのため、
- ・動かす速さ
- ・緊張
- ・姿勢
- ・疲労
などによって強さが変化します。
つまり、
「今日は突っ張りが強い」
という変動が起こるのも特徴です。
足の痙縮ではどんな症状が出る?
脳卒中後の足の痙縮では、特に以下が多く見られます。
① つま先立ちになる
ふくらはぎの筋肉が過剰に緊張すると、かかとが浮きやすくなります。
すると、
- ・つま先接地
- ・足が引っかかる
- ・転倒しやすい
状態になります。
② 足が内側に入る
足首が内側へねじれるようになることがあります。
これを「内反(ないはん)」と呼びます。
歩行時にバランスが崩れやすくなります。
③ 膝が突っ張る
太ももの筋緊張が強いと、
- ・膝が曲がらない
- ・足を振り出しにくい
- ・円を描くように歩く
などが起こります。
これは「分回し歩行」と呼ばれることがあります。
なぜ歩きにくくなるのか?
痙縮があると、
- ・関節が滑らかに動かない
- ・タイミングよく筋肉が働かない
- ・必要以上に力が入る
ため、歩行効率が低下します。
その結果、
- ・疲れやすい
- ・転びやすい
- ・歩行速度低下
- ・外出減少
につながることがあります。
痙縮は悪化するのか?
痙縮は、適切なケアがないと悪化することがあります。
特に、
- ・動かさない
- ・同じ姿勢ばかり
- ・痛み
- ・疲労
- ・不安
- ・感覚入力低下
などは痙縮を強める要因になります。
さらに、痙縮が長期間続くと、
- ・拘縮
- ・変形
- ・痛み
- ・関節可動域制限
につながることもあります。
つまり、
「ただ突っ張るだけ」
では済まないこともあるのです。
「力が強い」は回復ではない
脳卒中後、
「力が入るようになった」
と感じることがあります。
しかし実際には、
“自分でコントロールできない緊張”
が増えている場合があります。
つまり、
- 必要な時だけ力を出せる
のではなく、 - 常に力が入りすぎている
状態です。
これでは、かえって動きにくくなることがあります。
本当に重要なのは、
「力を入れる能力」だけでなく、
“力を調整できること”
なのです。
リハビリで何ができる?
痙縮に対して、リハビリは非常に重要です。
ただ筋肉を伸ばすだけではなく、
- ・姿勢調整
- ・感覚入力
- ・動作練習
- ・荷重練習
- ・歩行練習
などを通して、“脳の運動制御を再学習する”ことが重要になります。
リハビリで大切なポイント
① 足にしっかり体重を乗せる
痙縮がある方は、麻痺側へ体重を乗せるのが苦手なことがあります。
すると、
- ・麻痺していない側ばかり使う
- ・緊張がさらに強くなる
悪循環になります。
そのため、
「安全に荷重する経験」
が重要になります。
② 感覚入力を増やす
脳卒中後は感覚障害を伴うことも多く、
- ・足裏感覚低下
- ・位置感覚低下
などがあります。
すると脳が身体位置を把握しづらくなり、過剰緊張につながることがあります。
そのため、
- ・足裏刺激
- ・荷重
- ・立位練習
- ・歩行練習
などで感覚入力を増やすことも重要です。
③ 「使い方」を学習する
痙縮があると、
- ・無理に力む
- ・過剰努力
- ・不自然な動き
になりやすくなります。
そのため、
「どう動けば楽に動けるか」
を身体で学習していくことが大切です。
ボツリヌス療法について
痙縮が強い場合には、
ボツリヌス療法(ボトックス注射)
が行われることがあります。
これは、過剰に緊張している筋肉へ注射し、一時的に筋緊張を抑える治療です。
ただし重要なのは、
“注射だけでは終わらない”
ことです。
筋緊張が下がった状態で、
- ・歩行練習
- ・動作練習
- ・ストレッチ
- ・感覚入力
を行うことで、より効果的になるとされています。
痙縮と「脳の可塑性」
近年では、痙縮も単なる筋肉の問題ではなく、
“脳の再編成”
と関係していることが分かっています。
つまり、
- ・適切な運動
- ・感覚刺激
- ・繰り返し練習
によって、運動制御が変化する可能性があります。
そのため、慢性期でも適切なリハビリは重要です。
「もう仕方ない」と諦めない
痙縮は、完全にゼロにすることが難しい場合もあります。
しかし、
- ・歩きやすくなる
- ・疲れにくくなる
- ・転びにくくなる
- ・痛みが減る
- ・動作しやすくなる
など、“生活しやすい身体”を目指すことは十分可能です。
大切なのは、
「突っ張るから終わり」ではなく、
“どう付き合い、どう改善を目指すか”
です。
まとめ
脳卒中後の「足が突っ張る」症状は、痙縮による可能性があります。
痙縮とは、
“脳から筋肉への運動コントロール異常”
によって起こる症状です。
放置すると、
- ・歩行障害
- ・転倒
- ・疲労
- ・拘縮
- ・痛み
につながることがあります。
しかし、
- ・適切なリハビリ
- ・感覚入力
- ・姿勢調整
- ・動作練習
などによって、改善を目指すことは可能です。
重要なのは、
「力を抜くな」でも
「頑張れ」でもなく、
“身体を適切に使う経験”
を積み重ねることです。

当施設では
当施設では、脳卒中後の痙縮に対して、
- ・歩行分析
- ・姿勢評価
- ・荷重練習
- ・感覚入力アプローチ
- ・麻痺側の使い方練習
- ・自主トレーニング指導
などを行い、“生活の中で動きやすい身体づくり”をサポートしています。
「足が突っ張って歩きにくい」
「転びそうで不安」
「もっと楽に歩きたい」