脳卒中後、
「退院後は週1回のリハビリになった」
「もっとやりたいけど機会が少ない」
「本当にこれだけでいいのか不安」
と感じている方は少なくありません。
病院では毎日のようにリハビリをしていたのに、退院後は急に回数が減る。
この変化に戸惑う方はとても多いです。
もちろん、週1回のリハビリにも意味はあります。
しかし一方で、“週1回だけ”では十分でないケースもあるのが現実です。
特に脳卒中後では、
- ・麻痺
- ・歩行障害
- ・痙縮
- ・感覚障害
- ・体力低下
- ・学習性不使用
など、日常生活に関わる問題が複雑に絡み合っています。
今回は、
- ・なぜリハビリ量が重要なのか
- ・週1回では不足しやすい理由
- ・脳卒中回復と「反復」の関係
- ・自主練習は必要なのか
- ・どんなリハビリが重要なのか
について、研究や文献も交えながらわかりやすく解説します。
なぜ「回数」が重要なのか?
脳卒中後のリハビリは、単なる筋トレではありません。
本質は、
“脳に新しい動きを学習させること”
です。
脳には「可塑性(かそせい)」という性質があります。
これは、
- ・使う回路は強くなる
- ・使わない回路は弱くなる
という脳の特徴です。
つまり、
- ・繰り返し使う
- ・実際に動く
- ・感覚を入力する
ことで、脳内ネットワークが再編成されていきます。
そのため、脳卒中リハビリでは「反復」が非常に重要になります。
実際、リハビリ量は足りていない?
実は、研究では「リハビリ中の実際の運動量」が想像以上に少ないことが報告されています。
Langらの研究では、脳卒中リハビリ中の上肢反復回数は非常に少なく、十分な運動学習量に達していない可能性が示されました。
つまり、
「リハビリを受けている」
と
「十分な量の練習ができている」
は別問題なのです。
なぜ週1回では不足しやすいのか?
例えば、週1回40分のリハビリだけを考えてみます。
1週間は168時間あります。
そのうち40分だけ身体を意識していても、残りの時間で、
- ・麻痺側を使わない
- ・座っている時間が長い
- ・活動量が少ない
- ・麻痺していない側ばかり使う
状態が続けば、脳への入力は圧倒的に不足します。
特に脳卒中後は、
「日常生活そのものが脳学習」
になります。
つまり、週1回だけ頑張っても、残り6日間の過ごし方が非常に重要なのです。
「やればやるほど良い」わけではない
ここで誤解してはいけないのは、
“量だけ増やせばいい”
わけではないことです。
重要なのは、
- ・適切な課題
- ・正しい動作
- ・意味のある活動
- ・成功体験
- ・適度な難易度
です。
例えば、
ただ足を動かす
だけより、
- ・実際に立つ
- ・歩く
- ・コップを持つ
- ・着替える
など、“生活に直結した動作”の方が脳学習につながりやすいことが分かっています。
脳卒中後は「使わない」と低下しやすい
脳卒中後では、「学習性不使用」が起こることがあります。
これは、
- ・動かしづらい
- ・失敗する
- ・時間がかかる
経験を繰り返すことで、
「使わない」
ことを脳が学習してしまう現象です。
すると、
- ・麻痺側を使わない
- ・感覚入力低下
- ・神経回路低下
につながります。
つまり、週1回だけでは、
“日常生活の使わなさ”
を補いきれないこともあるのです。
「維持期だから変わらない」は本当?
以前は、
「脳卒中の回復は6か月まで」
と言われることもありました。
しかし現在では、慢性期でも脳可塑性は存在し、適切な運動学習によって改善が起こる可能性があることが分かっています。
特に、
- ・反復練習
- ・課題指向型訓練
- ・歩行練習
- ・上肢練習
- ・感覚入力
などは、慢性期でも有効性が報告されています。
つまり重要なのは、
「いつまで経ったか」より、
“どれだけ適切な経験を積めるか”
なのです。
自主練習は必要?
非常に重要です。
むしろ、リハビリ時間だけで回復を完結させることは難しい場合が多いです。
しかしここで大切なのは、
“自己流で頑張りすぎない”
ことです。
例えば、
- ・無理な反復
- ・間違った動作
- ・過剰努力
- ・痛みを我慢
は逆効果になることもあります。
そのため、
- ・今の身体に合った方法
- ・安全性
- ・目的
- ・頻度
を専門職と一緒に確認することが重要です。
リハビリは「生活の中」にある
本当に大切なのは、
「訓練室だけで終わらない」
ことです。
例えば、
- ・食事で麻痺手を添える
- ・立つ時に麻痺足へ体重を乗せる
- ・歩く機会を増やす
- ・外出する
など、日常生活そのものがリハビリになります。
つまり、
“週1回だけ身体を使う”
のではなく、
“毎日の中で身体を使う”
ことが重要なのです。
リハビリ量と歩行能力
研究では、歩行能力改善には「反復量」が重要であることが示されています。
特に歩行は、
- ・バランス
- ・感覚
- ・タイミング
- ・荷重
- ・筋活動
など複数要素の学習が必要です。
つまり、
“歩く経験そのもの”
が脳への重要な入力になります。
そのため、
- ・家で座ってばかり
- ・外出減少
- ・活動量低下
は、歩行機能低下につながりやすくなります。
「短時間でも毎日」の重要性
長時間をたまにやるより、
- ・短時間でも
- ・毎日
- ・継続的に
行う方が、脳学習には効果的な場合があります。
これは運動学習理論でも重要視されています。
つまり、
「週1回だけ集中」
より、
「日常的に脳へ刺激を入れる」
ことが大切なのです。
痛み・疲労・不安も影響する
脳卒中後では、
- ・痛み
- ・痙縮
- ・疲労
- ・転倒不安
- ・抑うつ
などによって活動量が低下することがあります。
すると、
動かない
↓
体力低下
↓
さらに動きにくい
↓
もっと活動量低下
という悪循環になります。
このため、
「安心して動ける環境」
を作ることも重要です。
リハビリは「回数」だけでなく「質」も重要
もちろん、ただ回数を増やせばいいわけではありません。
重要なのは、
- ・今の身体に合っているか
- ・目的が明確か
- ・正しい動作か
- ・感覚入力があるか
- ・生活につながっているか
です。
そのため、専門的な評価と方向性設定が非常に重要になります。
まとめ
週1回のリハビリにも意味はあります。
しかし脳卒中後では、
- ・脳可塑性
- ・運動学習
- ・感覚入力
- ・反復練習
などを考えると、“週1回だけ”では不足しやすいケースもあります。
特に重要なのは、
「リハビリ時間だけ頑張る」のではなく、
“日常生活の中で身体を使うこと”
です。
脳は、
- ・繰り返し
- ・経験
- ・感覚入力
によって変化していきます。
だからこそ、
「週1回だから意味がない」ではなく、
“週1回をどう日常につなげるか”
が重要なのです。
当施設では
当施設では、
- ・歩行分析
- ・麻痺側の使い方練習
- ・感覚入力アプローチ
- ・自主トレーニング指導
- ・日常生活動作練習
などを通して、「生活の中で変化を作るリハビリ」を大切にしています。
リハビリは、“受けている時間だけ”で終わるものではありません。
退院後や慢性期でも、身体が変化する可能性はあります。
「もっと動きやすくなりたい」
「このままでいいのか不安」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。
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参考文献
- Lang CE, et al. Observation of amounts of movement practice provided during stroke rehabilitation. Arch Phys Med Rehabil. 2009. DOI: 10.1016/j.apmr.2008.04.005
- Kleim JA, Jones TA. Principles of experience-dependent neural plasticity. J Speech Lang Hear Res. 2008. DOI: 10.1044/1092-4388(2008/018)
- Nudo RJ. Neural bases of recovery after brain injury. J Commun Disord. 2011. DOI: 10.1016/j.jcomdis.2011.04.004
- Wolf SL, et al. Effect of constraint-induced movement therapy on upper extremity function after stroke. JAMA. 2006. DOI: 10.1001/jama.296.17.2095
- Kwakkel G, et al. Effects of intensity of rehabilitation after stroke. Stroke. 1997. DOI: 10.1161/01.STR.28.8.1550
- 日本脳卒中学会.脳卒中治療ガイドライン2021