脳卒中後の方から、
- 「麻痺側を使うとすぐ疲れる」
- 「少し歩いただけでぐったりする」
- 「麻痺した手を使うと集中力が続かない」
- 「非麻痺側なら楽なのに麻痺側だと疲れる」
といった声を聞くことがあります。
実際に脳卒中後は、麻痺側を使うことで健常者よりも疲労しやすくなることが知られています。
しかし、その原因は単純な筋力低下だけではありません。
実は、
筋肉の問題
だけでなく、
脳が通常よりも多く働いていること
も大きく関係しています。
今回は、「麻痺側を使うと疲れる理由」について、脳の仕組みも含めて分かりやすく解説します。
そもそも脳卒中後は身体の動かし方が変わる
健康な人が歩く時や手を動かす時、
脳はほとんど無意識に身体をコントロールしています。
例えば、
- ・コップを取る
- ・立ち上がる
- ・歩く
といった動作は、特別に考えなくても自然にできます。
これは脳が効率よく情報処理を行っているためです。
しかし脳卒中によって脳の一部が損傷すると、このシステムに変化が起こります。
すると、
「今まで無意識にできていたこと」
に大きなエネルギーが必要になります。
脳は“動く前”から準備している
人が身体を動かす時、
脳は実際に動く前から準備を始めています。
例えばコップを持つ場合、
脳は
- ・手を伸ばす
- ・姿勢を保つ
- ・バランスを取る
- ・指を開く
といった情報を同時に処理しています。
健康な脳ではこれらを効率よく処理できます。
しかし脳卒中後は、
損傷していない脳の領域まで動員しながら動作を行うことがあります。
つまり、
同じ動作でも脳の仕事量が増えている
のです。
麻痺側を動かすと脳がたくさん働く
近年の脳画像研究では、
脳卒中後に麻痺側を動かす時、
健常者より広い範囲の脳活動がみられることが報告されています。
本来なら一部の運動野で処理できる動作を、
- ・運動野
- ・補足運動野
- ・前頭前野
- ・感覚関連領域
など複数の領域で補っていると考えられています。
これは回復のためには重要な仕組みですが、
一方で、
脳のエネルギー消費が増える
という側面もあります。
そのため、
「身体はそんなに動かしていないのに疲れる」
という現象が起こります。
集中力を使うことで疲れる
脳卒中後の方に、
「歩く時に何を考えていますか?」
と聞くと、
- ・足を出そう
- ・膝を伸ばそう
- ・転ばないようにしよう
- ・麻痺側に体重を乗せよう
など、多くのことを意識しています。
健康な人では自動化されている動作も、
脳卒中後は意識的なコントロールが必要になります。
つまり、
歩くだけでも脳はフル回転している状態です。
これが疲労感につながります。
身体の効率が低下している
疲れの原因は脳だけではありません。
脳卒中後は身体の使い方にも変化が起こります。
例えば、
- ・力が入りすぎる
- ・必要以上に筋肉を使う
- ・バランスを保つために緊張する
などです。
健康な人なら100のエネルギーでできる動作が、
脳卒中後では150や200必要になることがあります。
これを「運動効率の低下」といいます。
つまり、
同じ距離を歩いても疲れやすくなるのです。
麻痺側を避けるとさらに疲れやすくなる
疲れるからといって麻痺側を使わなくなると、
別の問題が起こります。
それが、
学習性不使用(Learned Non-Use)
です。
麻痺側を使わず、
健側ばかり使う生活が続くと、
脳は
「この手は使わなくていい」
と学習してしまいます。
すると、
- ・麻痺側の活動量低下
- ・感覚入力の減少
- ・機能回復の停滞
が起こりやすくなります。
つまり、
疲れるから使わない
↓
さらに使いにくくなる
↓
もっと疲れる
という悪循環に陥る可能性があります。
感覚障害も疲れに関係する
脳卒中後は、
- ・触った感覚
- ・関節の位置感覚
- ・重さの感覚
などが低下することがあります。
すると脳は、
身体の状態を把握するために通常以上の情報処理を行います。
例えば、
「足がどこにあるのか」
を確認するだけでも余分な注意が必要になります。
これも脳疲労の原因の一つです。
疲れやすいのは悪いことではない
「疲れるから回復していない」
というわけではありません。
むしろ、
脳が新しい動きを学習している途中では、
一時的に疲れやすくなることがあります。
これは脳が再編成(神経可塑性)を起こしながら、
新しい運動パターンを獲得しようとしているためです。
適切な負荷の中で麻痺側を使うことは、
脳の回復にとって重要な刺激になります。
リハビリで大切なこと
疲れをゼロにすることは難しいですが、
疲れにくい身体を作ることは可能です。
そのためには、
- ・姿勢を整える
- ・効率的な動作を学ぶ
- ・麻痺側への荷重を増やす
- ・感覚入力を増やす
- ・適切な運動量を設定する
ことが重要です。
単に筋力を鍛えるだけではなく、
脳と身体の両方にアプローチする必要があります。
まとめ
脳卒中後に麻痺側を使うと疲れやすいのは、
筋力低下だけが原因ではありません。
その背景には、
- ・脳の活動量増加
- ・注意力の消費
- ・感覚障害
- ・運動効率の低下
- ・神経可塑性による学習過程
などが関係しています。
つまり、
疲れやすさは「身体の問題」だけではなく、
脳が頑張って働いているサインでもある
のです。
適切なリハビリを継続することで、
脳と身体は少しずつ効率的な動きを学習していきます。
焦らず、生活の中で麻痺側を使う経験を積み重ねることが大切です。
当施設では“脳と身体の両方”に着目したリハビリを行っています
当施設では、
- ・脳卒中後遺症
- ・パーキンソン病
- ・歩行障害
- ・上肢機能障害
- ・バランス障害
などに対して、
単なる筋力トレーニングではなく、
脳の学習と神経可塑性を意識したリハビリ
を提供しています。
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