脳卒中後の方から、
- 「腕が鉛のように重い」
- 「持ち上げようとするとすごく疲れる」
- 「肩から腕がぶら下がっている感じがする」
- 「力は入るのに重く感じる」
- 「朝より夕方の方が重い」
といった相談を受けることがあります。
実際に、片麻痺のある方の多くが「腕の重さ」を感じています。
しかし病院で検査をしても、
「骨には異常がない」
「筋肉もそこまで弱くない」
と言われることも少なくありません。
ではなぜ、腕が重く感じるのでしょうか?
その原因は単純な筋力低下だけではなく、
- ・麻痺による筋活動の低下
- ・姿勢の崩れ
- ・感覚障害
- ・肩関節の問題
- ・脳の情報処理の変化
などが複雑に関係しています。
今回は、片麻痺の腕が重く感じる理由について詳しく解説します。
腕は本来「軽く持ち上がる」ようにできている
健康な人は腕を上げる時、
肩だけを使っているわけではありません。
実際には、
- ・体幹
- ・肩甲骨
- ・肩関節
- ・上腕
- ・前腕
が協調して働いています。
さらに脳は、
腕を動かす前から姿勢を調整しています。
そのため健康な人は、
「腕の重さ」
をほとんど意識することなく動かせます。
なぜ片麻痺では重く感じるのか?
① 麻痺によって筋肉が支えられなくなる
最も大きな理由の一つです。
脳卒中後は、
- ・三角筋
- ・棘上筋
- ・ローテーターカフ
- ・肩甲骨周囲筋
などが十分に働かなくなることがあります。
本来これらの筋肉は、
腕の重さを支える役割を担っています。
成人の腕の重さは体重の約5%程度とされています。
体重60kgの方なら、
片腕だけで約3kg前後あります。
健康な時は問題なく支えられますが、
筋活動が低下すると、
その重さが直接負担として感じられるようになります。
② 肩関節亜脱臼が起こる
脳卒中後によくみられるのが、
肩関節亜脱臼(Shoulder Subluxation)
です。
麻痺によって肩周囲の筋肉が働きにくくなると、
上腕骨頭が重力によって下方へ引っ張られます。
すると、
肩関節に隙間が生じます。
この状態になると、
- ・腕が抜けそう
- ・引っ張られる感じ
- ・だるい
- ・重い
という感覚が生じます。

③ 姿勢の崩れが影響する
以前の記事でもお伝えしたように、
姿勢は上肢機能に大きく影響します。
例えば、
- ・猫背
- ・体幹の傾き
- ・骨盤後傾
などがあると、
肩甲骨の位置が変化します。
すると、
肩周囲の筋肉が効率よく働けなくなります。
その結果、
本来より多くの筋力が必要になり、
「腕が重い」
と感じやすくなります。
④ 感覚障害による影響
脳卒中後は、
- ・触覚
- ・深部感覚
- ・位置覚
などが低下することがあります。
例えば、
目を閉じた状態で
「腕がどこにあるか」
が分かりにくくなることがあります。
すると脳は、
腕の位置を把握するために余分なエネルギーを使います。
その結果、
- ・動かしづらい
- ・疲れる
- ・重い
という感覚につながることがあります。
⑤ 筋緊張(痙縮)の影響
脳卒中後しばらくすると、
筋肉が過剰に緊張する
痙縮(Spasticity)
が現れることがあります。
特に多いのが、
- ・肘が曲がる
- ・手が握り込む
- ・肩が内側に入る
というパターンです。
筋肉が常に力を入れている状態になるため、
腕全体が重く感じることがあります。
また、
筋肉の柔軟性低下によって動かしにくさも増加します。
⑥ 脳が通常以上に働いている
意外かもしれませんが、
脳の疲労も関係しています。
健康な人は腕を動かす時、
ほぼ自動的に動作を行っています。
しかし脳卒中後は、
- ・腕を持ち上げる
- ・バランスを保つ
- ・肩を安定させる
といった処理に多くの脳領域を使います。
つまり、
腕を上げるだけでも
脳はフル回転しています。
この脳疲労が、
「重だるさ」
として感じられることがあります。
⑦ 浮腫(むくみ)
麻痺側では、
筋ポンプ作用が低下しやすくなります。
筋肉は血液やリンパ液を循環させるポンプの役割を持っています。
しかし、
動かす量が減ることで、
- ・手背
- ・前腕
- ・指
にむくみが生じることがあります。
むくみが強くなると、
実際に重量が増えるだけでなく、
重だるさも強く感じます。
腕が重い時にやってはいけないこと
よくあるのが、
「使わない方が楽だから」
と腕を放置してしまうことです。
しかし、
- ・活動量低下
- ・関節拘縮
- ・筋力低下
- ・感覚入力低下
につながり、
さらに重さを感じやすくなることがあります。
大切なのは、
適切な方法で腕を使うことです。
リハビリで重要なポイント
腕の重さを改善するためには、
単純な筋トレだけでは不十分です。
重要なのは、
- ・姿勢調整
- ・体幹機能改善
- ・肩甲骨の運動
- ・感覚入力
- ・荷重練習
- ・日常生活での使用
などを組み合わせることです。
特に、
「腕だけ」
ではなく、
身体全体の協調性を高めることが重要です。
まとめ
片麻痺の腕が重く感じる原因は、
単なる筋力低下だけではありません。
その背景には、
- ・麻痺による筋活動低下
- ・肩関節亜脱臼
- ・姿勢不良
- ・感覚障害
- ・痙縮
- ・脳疲労
- ・むくみ
などが関係しています。
つまり、
腕の重さは
脳・身体・姿勢・感覚の問題が組み合わさって起こる症状
なのです。
適切な評価とリハビリによって改善できる場合も多いため、
「仕方ない」と諦める必要はありません。
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引用文献
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