麻痺した手を“使いやすくする”考え方 ~「動くようにする」だけではなく、「生活で使えるようにする」ことが大切です~

脳卒中後、多くの方が悩まれる症状の一つが上肢麻痺です。

  • 「手が開かない」
  • 「物を持てない」
  • 「腕が思うように動かない」
  • 「使おうとしても疲れる」
  • 「結局、反対の手ばかり使ってしまう」

このような悩みは非常に多く聞かれます。

そして多くの方が、

「もっと手が動くようになれば使えるようになる」

と考えます。

もちろん、手指や腕の機能改善は重要です。

しかし実際には、

「動く=使える」ではありません。

リハビリでは、

"麻痺した手をどう動かすか"

だけでなく、

"どうすれば生活の中で使いやすくなるか"

という視点がとても重要です。

今回は、麻痺した手を使いやすくするための考え方について解説します。


なぜ麻痺した手は使わなくなるのか?

脳卒中後、多くの方は自然に非麻痺側(麻痺していない手)を使うようになります。

なぜなら、

非麻痺側の方が

  • ・速い
  • ・楽
  • ・正確

だからです。

例えば、

  • ・コップを持つ
  • ・歯磨きをする
  • ・着替える
  • ・スマホを操作する

などの日常動作も、非麻痺側だけである程度できてしまいます。

すると脳は、

「この手は使わなくても生活できる」

と学習してしまいます。

これを、

学習性不使用(Learned Non-Use)

と呼びます。


手は“使わないとさらに使いにくくなる”

脳は経験によって変化する性質があります。

これを

神経可塑性(Neuroplasticity)

といいます。

つまり、

使う回路は強化され、

使わない回路は弱くなります。

麻痺側を使わない生活が続くと、

  • ・動かしにくくなる
  • ・感覚が鈍くなる
  • ・動作のぎこちなさが増える
  • ・自信がなくなる

という悪循環が起こります。

そのため、

「上手に使えるから使う」

ではなく、

「使うから使いやすくなる」

という考え方が重要になります。


「治す」より「参加させる」

麻痺した手を使いやすくする上で大切なのは、

まずは完璧な動きを求めすぎないことです。

例えば、

「お箸が使えないから手を使わない」

ではなく、

  • ・茶碗を支える
  • ・テーブルを押さえる
  • ・タオルを持つ
  • ・洗濯物を押さえる

など、

補助手として参加させることから始めます。

これはリハビリの世界では、

Assist Hand(補助手)

という考え方です。

最初から器用な動きを求める必要はありません。


実は“手だけ”を見ても改善しない

手が動きにくい原因は、

手そのものだけにあるとは限りません。

例えば、

  • ・猫背
  • ・体幹の不安定さ
  • ・肩甲骨の硬さ
  • ・麻痺側への荷重不足

などがあると、

手は非常に使いにくくなります。


手を動かす前に身体は準備している

人が腕を動かす時、

脳は事前に体幹や姿勢を調整しています。

これを

予測的姿勢調節(Anticipatory Postural Adjustments:APA)

といいます。

つまり、

手を動かすためには、

身体の土台が安定している必要があります。

そのため、

手だけを一生懸命動かすよりも、

  • ・姿勢
  • ・体幹
  • ・バランス

を整えた方が結果的に手が使いやすくなることも少なくありません。


感覚を取り戻すことも大切

脳卒中後は、

  • ・触った感覚
  • ・関節の位置感覚
  • ・力加減

が分かりにくくなることがあります。

すると、

脳は手の状態を正確に把握できません。

例えば、

目を閉じると、

「手がどこにあるか分からない」

という方もいます。

この状態では、

動かそうとしても効率的に動きません。


感覚入力を増やす

感覚機能を高めるためには、

  • ・手で物に触る
  • ・テーブルに体重を乗せる
  • ・様々な素材に触れる
  • ・麻痺側で支える

ことが重要です。

感覚は、

「感じようとする」

よりも、

「使う中で育てる」

ことが大切です。


「生活の中で使う」が最も重要

リハビリ室でだけ使うのではなく、

生活の中で使うことが重要です。

例えば、

食事

  • ・茶碗を支える
  • ・お盆を持つ

洗面

  • ・歯磨き粉を押さえる
  • ・タオルを持つ

家事

  • ・洗濯物を押さえる
  • ・・ゴミ袋を持つ

趣味

  • ・本を支える
  • ・スマホを持つ

こうした小さな役割が、

脳にとって大きな学習になります。


「できる」と「している」は違う

以前の記事でもお伝えしましたが、

  • ・できるADL
  • ・しているADL

は違います。

リハビリ中だけ手を使えても、

家で使っていなければ変化は定着しにくくなります。

重要なのは、

毎日の生活の中で麻痺側が参加していること

です。


完璧を目指さない

多くの方が、

「ちゃんと動かないから使わない」

と考えます。

しかし、

回復している方ほど、

実は上手に使えていなくても使っています。

例えば、

  • ・少し触れる
  • ・支える
  • ・固定する

だけでも十分です。

小さな成功体験の積み重ねが、

脳の再学習につながります。


まとめ

麻痺した手を使いやすくするためには、

単純に

「筋力をつける」

だけでは不十分です。

重要なのは、

  • ・学習性不使用を防ぐ
  • ・手を生活に参加させる
  • ・姿勢や体幹を整える
  • ・感覚入力を増やす
  • ・日常生活で使う機会を作る

ことです。

そして何より、

「使えるようになったら使う」ではなく、
「使うから使いやすくなる」

という考え方が大切です。

麻痺側を少しずつ生活に参加させることで、脳は新しい学習を続けていきます。


麻痺した手をもっと使いたい方へ

当施設では、脳卒中後遺症による上肢機能障害に対して、

  • ・姿勢評価
  • ・体幹機能評価
  • ・感覚機能評価
  • ・肩甲骨・上肢機能練習
  • ・実生活に合わせた動作練習

を組み合わせながら、

「動く手」ではなく、

「生活で使える手」

を目指したリハビリを行っています。

「退院後から手の改善が止まった気がする」

「もっと麻痺側を使えるようになりたい」

「家での使い方が分からない」

そんな方はぜひ一度ご相談ください。

当施設では一宮市を中心に、自費リハビリを通して脳卒中後の生活をサポートしています。

一人ひとりの目標や生活環境に合わせながら、

“できる”を“している”へ変えるリハビリ

を提供しています。

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