【脳卒中リハビリ】麻痺した手が「動かない」のと「使えない」のは違う?作業療法士が教える改善の鍵

1. なぜ脳卒中で手が動かなくなるのか

脳卒中になると、手そのものが故障するわけではありません。脳から筋肉へ送られる「動かせ」という電気信号の通り道(運動麻痺)や、脳に情報を送る「感覚の道」がダメージを受けることで、脳が手のコントロールを失ってしまうのです。
2. 回復を妨げる「3つの壁」
脳卒中後の麻痺には、特有の現象が関わっています。
  • ・痙縮(けいしゅく): 自分の意思とは無関係に、筋肉が突っ張ってしまう現象。これが強いと、指を伸ばしたくても曲がってしまい、動作の邪魔をします。
  • ・注意の障害(半側空間無視): 麻痺している側の手があることを、脳が「忘れて」しまう状態。存在に気づかないため、使う機会が減り、さらに機能が落ちる悪循環に陥ります。
  • ・感覚障害: 「触っている感覚」や「関節の曲がり具合」が脳に伝わらないため、目で見続けなければ物を落としてしまいます。
3. 「脳の可塑性」を信じるリハビリ
かつて「死んだ脳細胞は戻らない」と言われましたが、最新の医学では、周りの元気な細胞が代わりに働き始める「可塑性(かそせい)」が注目されています。
  • 「生活で使う」ことが最大の練習: リハビリ室で動かすだけでなく、家で「テーブルを拭く時に左手を添える」といった、小さな「参加」が脳を書き換えます。


■脳卒中後の「動かしにくい手」をご自宅でケアする3つのステップ

1.まずは「準備」:硬くなった筋肉をリセット
脳卒中後は、筋肉が勝手に突っ張る「痙縮(けいしゅく」)が起きやすくなります。無理に動かす前に、まずはリラックスさせることが大切です。
温熱ケア:蒸しタオルや入浴で手を温めます。血行が良くなり、筋肉の緊張が和らぎます。

「触れる」マッサージ:良い方の手で、麻痺側の手のひらや指を優しく撫でます・「ここに手があるよ」と脳に教えるイメージです。
注意点:指を無理やり強い力で反らせるのはNGです。関節を痛める原因となります。

2.感覚を刺激する:脳への「入力」を増やす
「動かない」原因の一つは、脳が手の状態を把握できていないことです。色々な刺激を与えて、脳のネットワークを再構築します。
素材あてクイズ:目を閉じて、家族にタオル・アルミホイル・スポンジなどの素材を手に触れさせ、何を触っているのか当ててみます。
重みを感じる:500mlのペットボトル(水量は調節)を麻痺側の手に乗せ、その重さをじっと感じ取る練習をします。

3.実生活に「参加」させる:補助手としての役割
「リハビリ=特別な訓練」と考えず、日常生活の動作に麻痺側の手を少しだけ参加させます。これを専門用語で「共同動作」と呼びます。
押さえ役:紙をおさえて文字を書く、茶碗もおさえてご飯を食べる。
添え役:洗濯物を畳むときに手を添える、テーブルを拭く時に麻痺側の手を重ねて一緒に動かす。

まとめ:小さな「できた」を積み重ねる
脳のリハビリは、一日のハードな特訓よりも、毎日の小さな刺激の積み重ねが効果的です。「今日は昨日より少し指が柔らかいかも」という小さな変化を見逃さないことが、回復の近道になります。

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