脳卒中後のバランス障害とは?ふらつき・転倒を防ぐ方法|作業療法士が解説

脳卒中後に、

  • 「立っていると身体がふらつく」

  • 「歩くと左右に揺れる」

  • 「方向を変えるとバランスを崩す」

  • 「以前より転びやすくなった」

  • 「杖がないと不安」

  • 「脳梗塞になってから足元が不安定になった」

と感じる方は少なくありません。

脳卒中後のバランス障害は、単純に「筋力が落ちたから」だけで起こるわけではありません。

下肢の筋力、体幹のコントロール、感覚、視覚、身体の位置を認識する能力、注意力、歩行能力など、さまざまな要素が関係しています。

そのため、バランスを改善するためには「筋力をつける」だけではなく、実際の立位や歩行、方向転換などの動作の中でバランスを評価し、練習することが重要です。

今回は、脳卒中後のバランス障害について、種類や原因、立位・歩行での特徴、転倒を防ぐためのポイントを作業療法士の視点から解説します。


脳卒中後の「バランス」とは?

まず、バランスにはいくつかの種類があります。

静的バランス

静的バランスとは、その場で姿勢を保つ能力です。

例えば、

  • ・椅子に座って姿勢を保つ

  • ・両足で立つ

  • ・立ったまま身体を安定させる

といった能力が含まれます。

「立っていられるからバランスは大丈夫」と思われることもありますが、静かに立つ能力だけでは日常生活で必要なバランス能力を十分に判断できません。

動的バランス

動的バランスは、身体を動かしながら姿勢を安定させる能力です。

例えば、

  • ・歩く

  • ・方向を変える

  • ・階段を上る

  • ・物を取るために手を伸ばす

  • ・椅子から立ち上がる

などがあります。

日常生活では、こちらの能力が非常に重要になります。

予測的・反応的なバランス

さらに、身体を動かす前に重心を移動させる能力や、突然身体が揺れたときに足を出して姿勢を立て直す能力もあります。

例えば、歩き始めるときには、身体を前方へ移動させてから足を踏み出します。

また、歩いているときに人とぶつかったり、床の状態が変わったりした場合には、素早く身体を立て直す必要があります。

つまり、バランスとは「じっと立っていられる能力」だけではありません。


脳卒中後にバランスが悪くなる原因

脳卒中後のバランス障害には、複数の原因が関係します。

2023年のNational Clinical Guideline for Strokeでは、下肢筋力の低下だけでなく、体幹コントロールの低下、感覚障害、二重課題、身体の垂直性の認識などもバランス障害の要因として挙げられています。

下肢の筋力低下

麻痺側の脚に十分な力を入れられないと、立位や歩行が不安定になります。

特に、

  • ・股関節周囲

  • ・膝周囲

  • ・足関節周囲

の筋力や運動コントロールは、立位・歩行に関係します。

体幹のコントロール低下

体幹を適切に動かしたり、姿勢を保ったりする能力が低下すると、身体が左右に揺れやすくなることがあります。

脳卒中後には、麻痺側と非麻痺側で体重のかかり方が偏ることもあります。

感覚の低下

足の裏や関節などから入る感覚は、立っているときの身体の位置を把握するために重要です。

麻痺側の足からの情報が入りにくくなると、「足が床についている感覚が分かりにくい」「どちらに体重がかかっているのか分かりにくい」といった問題につながることがあります。

視覚や認知機能の影響

バランスには視覚も関係します。

さらに、歩きながら会話する、荷物を持つ、周囲を確認するなど、複数のことを同時に行う「二重課題」では、バランスが崩れやすくなる場合があります。

脳卒中後の姿勢制御には、運動機能だけでなく感覚・知覚・認知なども関係することが報告されています。


立っているときのバランスを確認するポイント

脳卒中後のバランスを考えるとき、まず確認したいのが「立位」です。

麻痺側に体重を乗せられているか

鏡の前で立ったときに、無意識に健側へ体重をかけていないでしょうか?

麻痺側への荷重が少ない場合、左右の足に均等に体重をかけることが難しくなります。

ただし、「左右50%ずつにすれば必ず良い」というわけではありません。

大切なのは、必要な場面で麻痺側にも安全に体重を移動できることです。

身体が左右に大きく揺れていないか

立っているだけなのに身体が大きく揺れる場合は、姿勢を安定させるための調整がうまくいっていない可能性があります。

ただし、身体の揺れがあるからといって、単純に「体幹が弱い」と決めつけることはできません。

筋力、感覚、姿勢制御、視覚、認知などを含めて確認する必要があります。


歩行中のふらつきを確認する

立っているときには問題がなくても、歩き始めるとふらつく方もいます。

これは、歩行では立位よりも高度なバランス能力が必要になるためです。

歩き始めにふらつく

歩行開始では、身体の重心を前方へ移動させながら足を出す必要があります。

麻痺側への荷重や身体の前方移動が苦手だと、歩き始めに不安定になることがあります。

方向転換でふらつく

歩行中よりも、

「曲がるとき」

「振り返るとき」

「狭い場所を通るとき」

にふらつく場合があります。

方向転換では、身体の重心移動、足の運び、視線、体幹の回旋などを同時に調整する必要があるためです。

歩行速度を上げると不安定になる

ゆっくりなら歩けるものの、少し急ぐと、

  • ・足がもつれる

  • ・麻痺側の足を引きずる

  • ・身体が左右に揺れる

  • ・歩幅が小さくなる

  • ・転びそうになる

という方もいます。

「歩けるかどうか」だけではなく、どの程度の速度・環境で安全に歩けるのかを見ることが大切です。


脳卒中後のバランスリハビリでは何をする?

バランスリハビリでは、現在の問題に合わせて練習内容を変える必要があります。

2023年の脳卒中ガイドラインでは、座位・立位・ステップ・歩行など、さまざまな段階のバランス障害に対して、反復的な課題練習を含む段階的なバランストレーニングが推奨されています。

体幹のコントロール

座位や立位で身体を適切に動かす練習を行います。

ただし、単純に「腹筋を鍛える」だけではありません。

実際の動作で必要になる、

  • ・前後への重心移動

  • ・左右への重心移動

  • ・リーチ動作

  • ・姿勢を戻す能力

などを確認します。

体幹エクササイズについても、脳卒中後の姿勢制御への効果を検討したシステマティックレビューがありますが、アウトカムによって効果の大きさが異なるため、単一のトレーニングだけに頼るのではなく、目的に応じて組み合わせることが重要です。

立位での重心移動

「麻痺側に体重を乗せる」

「前に重心を移動する」

「左右に重心を移動する」

など、実際の動作につながる練習を行います。

足を踏み出す練習

バランスを崩したときには、足を適切な方向へ踏み出して身体を支える必要があります。

そのため、単純に立っているだけではなく、ステップ動作や歩行につながる練習も重要です。

実際の歩行練習

最終的に日常生活で歩くのであれば、歩行そのものを練習することも重要です。

「筋力トレーニングをしたから歩行が安定する」とは限りません。

歩行、方向転換、段差、階段など、実際の生活で必要な課題を取り入れることが重要です。

バランス訓練については、脳卒中後のバランス能力を改善できることを示したシステマティックレビューもあります。


転倒を防ぐために大切なこと

脳卒中後は、バランス障害だけでなく、筋力低下、感覚障害、認知機能、薬剤、過去の転倒経験、二重課題など、さまざまな要因によって転倒リスクが高くなります。

そのため、「バランスを良くすれば転倒しなくなる」と単純に考えるのではなく、転倒しやすい状況そのものを確認することが重要です。

例えば、

  • ・夜間のトイレ

  • ・浴室への出入り

  • ・ベッドからの立ち上がり

  • ・段差

  • ・階段

  • ・急いでいるとき

  • ・荷物を持ちながら歩く

  • ・会話しながら歩く

などです。

バランス能力がある程度改善していても、こうした状況で転倒することがあります。

そのため、リハビリでは「どれくらいバランスが良くなったか」だけでなく、実際の生活で安全に動けるようになったかを確認することが大切です。


関連記事:脳卒中後の転倒を防ぐには?

脳卒中後の転倒について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事も参考にしてください。

関連記事:脳卒中後の転倒を防ぐために知っておきたいこと


歩行を安定させるためには「歩き方」も重要

バランス障害がある方では、歩き方にも特徴が現れることがあります。

例えば、

  • ・麻痺側の足を引きずる

  • ・歩幅が小さい

  • ・左右の歩幅が大きく違う

  • ・非麻痺側へ身体が傾く

  • ・麻痺側に十分に体重を乗せられない

  • ・歩行速度を上げるとふらつく

などです。

そのため、「毎日たくさん歩く」というだけではなく、どのように歩いているのかを確認することが重要です。

歩行練習は、実際の歩行課題を繰り返し練習することが基本となります。脳卒中ガイドラインでも、歩行やバランスに対して反復的な課題練習が推奨されています。


関連記事:脳卒中後の歩行を改善するには?

歩行の姿勢や体重移動、足の運び、歩行速度などについては、こちらの記事で詳しく解説しています。

関連記事:脳卒中後の歩行を改善するには?歩き方を見直す7つのポイント


階段ではさらに高いバランス能力が必要

階段昇降では、平地歩行以上に大きな重心移動や片脚支持が必要になります。

特に、

  • ・麻痺側の脚に体重を乗せる

  • ・反対側の足を持ち上げる

  • ・身体を前方へ移動させる

  • ・段差に足を置く

といった動作を同時に行います。

そのため、平地では問題なく歩ける方でも、階段になると急に不安定になることがあります。

階段では手すりを使用することや、必要に応じて杖などの歩行補助具を利用することも、安全を確保するうえで重要です。


関連記事:脳卒中後の階段昇降を安全に行うポイント

階段でのふらつきや、手すりの使い方についてはこちらの記事も参考にしてください。

関連記事:脳卒中後の階段昇降を安全に行うポイント


脳卒中後のバランス障害は改善できる?

「脳卒中になってから時間が経っているから、バランスはもう良くならないのでは?」

と考える方もいるかもしれません。

しかし、脳卒中後のリハビリは、発症直後だけに意味があるわけではありません。

2023年の脳卒中ガイドラインでは、脳卒中後のどの時期であっても、リハビリテーションによる利益を得られる可能性があるとされています。

また、慢性期を含む脳卒中者を対象としたバランストレーニングの研究では、バランス能力の改善が報告されています。

もちろん、すべての方が同じように改善するわけではありません。

重要なのは、

「今の自分は何が原因でふらついているのか?」

を確認することです。

筋力なのか。

感覚なのか。

体幹なのか。

麻痺側への荷重なのか。

歩行中の足の運びなのか。

方向転換なのか。

あるいは視覚や認知、二重課題が関係しているのか。

原因が違えば、必要なリハビリも変わります。


まとめ|脳卒中後のバランス改善は「ふらつきの原因」を知ることから

脳卒中後のバランス障害は、単純な筋力低下だけで起こるものではありません。

主なポイントをまとめると、

  • ・バランスには静的・動的など複数の種類がある

  • ・下肢筋力だけでなく体幹や感覚も関係する

  • ・麻痺側への体重移動が難しくなることがある

  • ・立位では身体の揺れや左右差を確認する

  • ・歩行では方向転換や速度変化にも注目する

  • ・実際の生活動作に合わせたバランス練習が重要

  • ・転倒予防には環境や薬剤、認知・感覚なども含めた評価が必要

  • ・必要に応じて杖や装具などの補助具も検討する

ということが挙げられます。

脳卒中後のバランス改善で大切なのは、単に「バランス練習をする」ことではありません。

「なぜふらついているのか」を評価し、その原因に合わせて練習することです。

「歩けるようにはなったけれど、ふらつきが気になる」

「麻痺側に体重をかけるのが怖い」

「外を歩くと不安になる」

「最近、転倒することが増えた」

という場合には、現在の動作を一度専門家に確認してもらうことをおすすめします。


リハビリスタジオ一宮でバランス・歩行の状態をチェックしませんか?

リハビリスタジオ一宮では、作業療法士がマンツーマンで身体の状態や動作を確認し、一人ひとりの目標に合わせた自費リハビリを行っています。

脳卒中後のバランス障害では、「バランスが悪い」という結果だけを見るのではなく、

  • ・どこでふらつくのか

  • ・麻痺側に体重を乗せられているか

  • ・立位でどのように姿勢を保っているか

  • ・歩行中に身体がどのように動いているか

  • ・方向転換で何が起きているか

  • ・転倒につながる動作がどこにあるのか

などを確認することが大切です。

「自分のふらつきの原因を知りたい」

「歩行をもっと安定させたい」

「転倒せずに外出できるようになりたい」

という方は、まず現在の身体の状態や歩き方を確認することから始めてみましょう。

一人ひとりの「できるようになりたい」に合わせて、マンツーマンでサポートします。

初回体験では、施術60分+カウンセリング15分を5,000円で実施しています。

脳卒中後のバランスや歩行について気になることがある方は、ぜひ一度ご相談ください。

▶ リハビリスタジオ一宮の初回体験・ご予約はこちら
https://rihasuta-ichinomiya.com/
▶事前決済がご希望の方はこちらから


参考文献

  1. National Clinical Guideline for Stroke. Rehabilitation and recovery – motor recovery and physical effects of stroke. 2023.
  2. Pollock A, et al. The effect of balance training on balance performance in individuals poststroke: a systematic review. Neurorehabil Neural Repair. DOI: 10.1097/NPT.0b013e3181ef764d.
  3. Marquer A, et al. Motor strategies of postural control after hemispheric stroke. Neurophysiol Clin. 2015. DOI: 10.1016/j.neucli.2015.09.003.
  4. Cabrera-Martos I, et al. The Effectiveness of Core Exercising for Postural Control in Patients with Stroke: A Systematic Review and Meta-Analysis. PM&R. 2020. DOI: 10.1002/pmrj.12330.
  5. Chen K, et al. Advances in balance training to prevent falls in stroke patients: a scoping review. Front Neurol. 2024. DOI: 10.3389/fneur.2024.1167954.
  6. American Heart Association/American Stroke Association. 2026 Guideline for Adult Stroke Rehabilitation and Recovery. 2026.