片足立ちができないと歩行にどんな影響がある?|脳卒中後の歩行を作業療法士が解説

「片足立ちができないけれど、歩くことはできる」
「麻痺側の足に体重を乗せると、すぐにふらつく」
「歩くときに左右差がある気がする」

脳卒中後のリハビリでは、このような相談を受けることがあります。

歩行では、一瞬ですが片方の足だけで身体を支える時間があります。そのため、片足で身体を支える能力は、歩行を安定させるための重要な要素の一つです。

ただし、「片足立ちができない=歩けない」というわけではありません。

実際の歩行は、静止した状態で長時間片足立ちをする動作ではなく、両足支持と片足支持を繰り返しながら身体を前へ運ぶ動的な動作です。

この記事では、脳卒中後に片足立ちが難しくなる原因から、歩行への影響、評価するときのポイント、改善方法まで、作業療法士の視点から解説します。


片足立ちができないと歩行にどんな影響がある?

まず結論からいうと、片足立ちが難しい場合、歩行では以下のような問題につながることがあります。

  • ・麻痺側に体重を乗せにくくなる
  • ・反対側の足を前に出しにくくなる
  • ・歩幅が小さくなる
  • ・左右の歩幅に差が出る
  • ・歩行速度が低下する
  • ・身体を左右に大きく揺らして歩く
  • ・方向転換でふらつきやすくなる
  • ・段差や不整地でバランスを崩しやすくなる
  • ・転倒への不安から歩く量が減る

特に脳卒中後では、麻痺側下肢の筋力低下や感覚障害、体幹コントロールの低下などがバランス能力に影響します。脳卒中後のバランス障害には、下肢の筋力だけでなく、体幹コントロール、感覚、二重課題、身体の垂直認知なども関係するとされています。

つまり、「片足立ちができない」という結果だけを見るのではなく、なぜ片足で支えられないのかを考えることが重要です。


① 原因|なぜ片足立ちができなくなるのか?

1.麻痺側の下肢に体重を乗せにくい

脳卒中後に多いのが、麻痺側の足に十分な体重を乗せられないケースです。

例えば右片麻痺の場合、

「右足に体重を乗せるのが怖い」
↓
「左足に体重を逃がす」
↓
「右足で身体を支える時間が短くなる」

という状態になることがあります。

この状態が続くと、歩行でも右足を支持脚として使う時間が短くなり、左足を十分に前へ振り出せないことがあります。

脳卒中後の歩行の左右差には、下肢の運動・感覚障害、筋力、痙縮などが関連することが、2025年の系統的レビュー・メタ解析でも報告されています。


2.下肢の筋力・支持力が低下している

片足で身体を支えるには、膝や股関節、足関節周囲の筋肉が働く必要があります。

特に、

  • ・大腿四頭筋
  • ・ハムストリングス
  • ・中殿筋などの股関節周囲筋
  • ・下腿三頭筋
  • ・足部周囲の筋

などが関係します。

ただし、「筋力が弱いから片足立ちができない」と単純に考えるのは注意が必要です。

筋力がある程度あっても、

  • ・タイミング
  • ・感覚
  • ・姿勢制御
  • ・体重移動
  • ・足部の安定性

などに問題があれば、片足で安定して立てないことがあります。


3.体幹を安定させにくい

片足立ちでは、足だけで身体を支えているわけではありません。

身体の中心である体幹を安定させながら、重心を支持している足の上へ移動させる必要があります。

体幹が不安定だと、

「右足に体重を乗せる」
↓
「身体が右へ倒れそうになる」
↓
「怖くなって左足を着く」

というように、片足支持を続けられなくなります。

脳卒中後のバランス障害には体幹コントロールも関係するため、下肢だけではなく体幹を含めて評価することが重要です。


4.足の感覚が低下している

足の裏や関節から入ってくる感覚も、立位バランスには重要です。

「足が床についていることは分かるけれど、どのくらい体重が乗っているのか分かりにくい」

というケースでは、無意識のうちに麻痺側への荷重を避けてしまうことがあります。

また、視覚に頼ってバランスを取るようになると、暗い場所や足元が見えにくい状況で不安定になることもあります。


② 要素|片足立ちと歩行にはどんな共通点がある?

ここで大切なのが、片足立ちと歩行を同じものとして考えないことです。

歩行中の片足支持は一瞬であり、静止した片足立ちとは異なります。

しかし、両者には共通する重要な要素があります。

要素1.支持脚で身体を支える

歩行では、一方の足が床について身体を支えている間に、反対側の足を前へ運びます。

つまり、

「片方の足で支える能力」

は歩行の基本的な要素です。

麻痺側で身体を支える能力が低下していると、麻痺側で支えている間に反対側の足を十分に前へ出せないことがあります。


要素2.重心を支持脚へ移動する

歩行では、足を前に出すだけではありません。

身体の重心を左右へ移動させながら、次の一歩を作っています。

例えば右足を前に出す場合、その前段階では左足側へ体重を移して、右足を床から離す準備をします。

逆に左足を前に出すためには、右足で身体を支える必要があります。

そのため、

左右への体重移動がスムーズにできること

が歩行では重要です。


要素3.姿勢を崩さずに足を動かす

片足で支えている間、身体が大きく傾いてしまうと、反対側の足を安全に動かすことが難しくなります。

例えば、

  • ・骨盤が大きく横へ移動する
  • ・上半身が支持脚側へ大きく傾く
  • ・膝が不安定になる
  • ・足首がぐらつく

などがあると、歩行の効率が低下する可能性があります。

実際、脳卒中後の歩行では左右非対称がよくみられ、立位バランスの左右差と歩行の左右差との関連も報告されています。


③ 評価ポイント|「片足立ちできる・できない」だけでは判断しない

リハビリでは、片足立ちの秒数だけを見るのではなく、どこに問題があるのかを確認します。

評価ポイント① どちらの足で立ちにくい?

まずは左右差を確認します。

例えば、

  • ・非麻痺側では5秒程度できる
  • ・麻痺側では1秒も難しい

という場合、左右の支持能力に差がある可能性があります。

ただし、秒数だけで歩行能力を判断することはできません。


評価ポイント② 体重をどこに乗せている?

片足立ちになる前の「荷重移動」を確認します。

麻痺側に体重を乗せる前に、

  • ・骨盤が逃げる
  • ・体幹が大きく傾く
  • ・非麻痺側の足をすぐに着く

といった動きがないか確認します。

ここに問題があれば、単純な筋力トレーニングだけではなく、麻痺側へ体重を移す練習が必要になることがあります。


評価ポイント③ 膝が安定している?

麻痺側で立ったときに、

「膝がガクッと曲がる」

あるいは反対に、

「膝を伸ばし切って固めている」

場合があります。

どちらも歩行中の支持に影響する可能性があります。


評価ポイント④ 骨盤・体幹はどう動く?

片足立ちの際に、

  • ・骨盤が大きく横へ移動する
  • ・上半身が支持脚側へ傾く
  • ・身体を固めている

などがないか確認します。

これは「片足立ちができるか」だけでは分からない重要なポイントです。


評価ポイント⑤ 歩行中はどうなっている?

最終的には、実際の歩行を確認します。

例えば、

片足立ちが苦手
→ 麻痺側に体重を乗せにくい
→ 反対側の足を素早く着く
→ 麻痺側の支持時間が短くなる
→ 歩幅が小さくなる

というパターンが考えられます。

ただし、実際には人によって代償方法が異なります。

そのため、片足立ちの検査結果だけで歩行を決めつけないことが重要です。


④ 改善|片足立ちを良くするには何をすればいい?

1.まず「片足立ち」そのものを無理に練習しない

片足立ちができないからといって、いきなり何秒も片足立ちをする必要はありません。

転倒リスクがある場合には、無理に一人で行うべきではありません。

まずは安全な環境で、

両足立ち
↓
左右への体重移動
↓
片足への荷重を増やす
↓
反対側の足を少し浮かせる
↓
必要に応じて片足支持へ

というように、段階的に難易度を調整します。


2.麻痺側への荷重練習を行う

例えば立位で、

「右足に体重を移す」
「左足を少し浮かせる」

といった練習を行います。

重要なのは、単に身体を右へ倒すことではありません。

足の上に身体の重心を移動させること

を意識します。

ただし、具体的な方法は麻痺の程度やバランス能力によって変わります。


3.実際の歩行につなげる

片足立ち能力を高めること自体が目的ではありません。

最終的には、

「安全に歩けること」

につなげる必要があります。

そのため、

  • ・一歩前へ出す
  • ・横方向へステップする
  • ・障害物をまたぐ
  • ・方向転換する
  • ・歩行速度を変える
  • ・不整地を歩く

など、実際の生活で必要になる動作へ発展させます。

脳卒中後のリハビリでは、バランス障害に対して反復的・段階的な課題練習を行うことが推奨されています。また、歩行についても、安全を確保しながら実際の歩行練習を行うことが重要とされています。


4.体幹・下肢の機能も合わせて確認する

片足立ちが難しい場合、

「片足立ちだけを練習する」

のではなく、

  • ・体幹
  • ・骨盤
  • ・股関節
  • ・膝
  • ・足関節
  • ・足部
  • ・感覚
  • ・バランス反応

などを総合的に確認することが大切です。

2023年の系統的レビュー・ネットワークメタ解析では、脳卒中後のバランス・歩行トレーニングについて66研究、1,933人を対象に検討され、バランスは静的・動的・予測的・反応的など複数の側面から考える必要があるとされています。研究間で効果には違いがあり、エビデンスの確実性も全体として低~非常に低い点には注意が必要です。

つまり、「片足立ちが何秒できたか」だけでなく、生活の中で必要なバランス能力まで考えることが重要です。


片足立ちができない=歩けない、ではありません

ここは非常に大切なポイントです。

片足立ちができない人でも、歩ける場合はあります。

また、片足立ちが長くできるからといって、必ずしも歩行が安定しているとは限りません。

歩行では、

  • ・一瞬の片足支持
  • ・重心移動
  • ・足の振り出し
  • ・姿勢制御
  • ・足を接地するタイミング
  • ・方向転換
  • ・周囲への注意

など、複数の能力を同時に使います。

そのため、

「片足立ちができないから歩行が悪い」

と単純に考えるのではなく、

「なぜ片足で支えられないのか」
「歩行中にどの場面で問題が出ているのか」

を評価することが大切です。

特に脳卒中後は、下肢の運動・感覚障害や筋力、痙縮などが歩行の左右差と関連することが報告されています。


まとめ|片足立ちを見ることで歩行の問題が見えてくる

片足立ちができない場合、歩行では、

  • ・麻痺側への荷重が難しい
  • ・支持脚として使う時間が短くなる
  • ・反対側の足を出しにくくなる
  • ・歩幅が小さくなる
  • ・左右差が大きくなる
  • ・方向転換や段差で不安定になる

などにつながる可能性があります。

一方で、片足立ち能力と歩行能力は完全に同じではありません。

重要なのは、

原因 → 要素 → 評価 → 改善

という流れで考えることです。

「片足立ちができない」という結果だけを見るのではなく、

麻痺側に体重を乗せられているか?
身体の重心を適切に移動できているか?
膝や足首は安定しているか?
実際の歩行ではどのような問題が起きているか?

まで確認することで、歩行改善につながるヒントが見つかることがあります。


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参考文献

  1. Xu J, et al. Stroke-related factors associated with gait asymmetry in ambulatory stroke survivors: A systematic review and meta-analysis. Gait Posture. 2025;121:173-181. PMID: 40450904.
  2. National Clinical Guideline for Stroke. 4.20 Balance / 4.22 Walking. 2023.
  3. Zhang M, et al. The effect of balance and gait training on specific balance abilities of survivors with stroke: a systematic review and network meta-analysis. 2023. 66 studies, 1,933 participants.
  4. Hendrickson J, Patterson KK, Inness EL, McIlroy WE, Mansfield A. Relationship between asymmetry of quiet standing balance control and walking post-stroke. Gait Posture. 2013. PMID: 23877032.
  5. Patterson KK, et al. Evaluation of gait symmetry after stroke: a comparison of current methods and recommendations for standardization. Gait Posture. 2010. PMID: 19932621.